ドラフクロスの歴史

ドラフクロスの歴史

 ドラフクロスは元々アディアーノという豊富な水源に恵まれた果樹栽培と漁業で暮らしていた小さくて平和な農村でした。
 大陸の一番端にあるということで大きな戦に巻き込まれることがなく、また町で信仰されていたのが「自然の恵みと大切さ」を説く“水と森の神”であった為、アディアーノの人々は温厚で人情味の溢れていました。

 ところがある日、この平穏な町は戦火に晒されることになります。
 北の列島諸国が、この大陸の征服を企て、その足がかりとしてこの村に襲い掛かってきたのです。
 農民しかいなかったアディアーノは、たった一夜にして列島諸国の軍門に下ります。
 この時は直前に列島諸国の動きを察知した大陸の中央聖王国軍により、3日と経たずに開放されましたが、この侵攻を皮切りに、アディアーノの平穏な日常は奪われてしまいました。
 中央王国軍は北の列島諸国からの脅威に備え、アディアーノに砦を築き、実質的に中央王国の配下に置きます。
 ところがこの動きに、アディアーノのすぐ南の国家から「その町は我が国の領土であり、中央王国の所業は我が国への侵略行為だ」として、2国間の領土争いが勃発します。
 アディアーノは元々「政治的な意味が無い」ということで、どちらの国からも見向きもされなかった中立地帯でしたが、一度火が付いたモノはなかなか止まりません。
 幾回も戦が起こり、何度も支配国が変わりました。
 果樹園は兵士の墓となり、海には戦船の残骸が漂い、平穏だった町は血の匂いが漂う戦場と化しました。
 そして、5年にも及ぶ戦争は中央聖王国の勝利で終わりました。

 戦いに決着をつけ、その功績によりアディアーノの領主となった中央聖王国の騎士は、このアディアーノの出身でした。
 彼はあの豊かで平和だった頃のアディアーノを取り戻す為に尽力します。
 ただ、長く続いた戦争の影響で、主な産業であった果樹園と漁業は壊滅的な打撃を受けており、回復するまでには長い時間が必要でした。

 その時、東の海を越えて別の大陸の使者が町を訪れます。
 使者は「東の大陸は、この町が長年戦いの渦中にあった事を知っており、その苦難の戦いを制した領主と友好関係を築き、活発な交易をしたい」と申し出てきます。
 この思いがけない来訪者により、領主はこの町をツーフィストと東の大陸との貿易の拠点にし、国益を上げることを決意します。
 ただ、中央聖王国より受けた復興資金では、貿易に必要な港などの設備を整えるには到底足りませんでした。
 困った領主は、すぐにでも貿易を始めたい東の大陸から物資の援助を受けると同時に、戦争の道具として使われ、城の片隅に放置されていた壊れかけのゴーレムを使い、復興するのに3年かかると言われていた荒れ果てた港と街道の整備を、僅か半年で済ませてします。
 こうして他国との貿易を開始したアディアーノは、貿易都市として急速に発展していくことになりました。

 その3年後、領主の献身的な治世により、かつての穏やかさを取り戻そうとしていたアディアーノでしたが、他国からの援助を受けて始めた貿易と、その収益を巡って近隣の貴族との関係が悪化し、ついには本国より不当ともいえる重税をかけられことになります。

 そして1年後、この重税に耐えかねたアディアーノ市民が一斉蜂起しました。
 領主は蜂起直後、市民に沈静化を呼び掛ける為に奔走しましたが、後に市民の強い要望と団結の姿勢を受けて、彼は中央聖王国に対し独立戦争を挑むことになります。
 この独立戦争は、領主の前に現れた1人の少女が、「かつてのアディアーノを取り戻したければ独立するしかない」と説得したという逸話から、≪女神の采配≫と呼ばれるようになりました。

 ≪女神の采配≫当初、圧倒的な戦力を有していた中央聖王国の大臣たちは、ここ数年で目障りになり初めていた街を組み敷く良い機会と見て楽観していましたが、この戦争は大臣たちの思っていたよりも早く。そして以外な結末を迎えて終結しました。

 アディアーノは、復興を始めて僅かな年月しか経っていませんでしたが、この街がもたらす“貿易の拠点”としての魅力により、南の王国と東の大陸が独立を支援することを表明したのです。
 これにより、中央聖王国は「貿易の中心地として中立の立場を貫くのであれば、旧アディアーノのように自治権を認める」と認めざるを得なくなり、アディアーノは独立宣言より僅か半年で1つの都市国家として認められるようになりました。

 初代国王となった領主は、街道整備と区画整備に力を入れ、美しい果樹園が広がるアディアーノ地区と、貿易産業を中心に見据えたクロス地区を作り、街の名を貿易の十字路という意味を込めたドラフクロスへと改名しました。

 それより20年の年月が経ち、ドラフクロスは初代国王の想い描いたとおりにツーフィスト大陸と東の大陸、そして北の列島諸国との貿易の中心地となり、クロス地区は当初の数倍に拡大し、アディアーノ地区の果樹園では輸出品として高値で取引される果物が豊かな実りを迎えています。
 そして、ドラフクロスの統制のとれた美しい街並みは、大陸でも有数との評判が広がっており、この街には商売だけでなく、観光目的で訪れる旅人も多くなりました

 しかし、その風景を夢見た初代国王は≪女神の采配≫戦争の時に受けた傷が悪化し、建国3年目にして他界しています。

 なお、彼が病に伏した時、彼の元に作り直された果樹園で初めて実った果実が届けられ、初代国王とその側近は人目も憚らず涙したと伝えられています。


  • 最終更新:2010-10-25 22:06:48

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