ニーダの手記01
はじめがき
「これは、ゲームであっても、遊びではない」
その日、まさに運命の日と言ってもいいその日、ゲームデザイナーである茅場晶彦はそう宣言してわたしたちを閉じ込めた。
このプログラムで作られた電子の世界に――
あまりゲームに詳しくない……というか、ぶっちゃけゲームはこれが初体験なわたしにとって、それは性質の悪いジョークか、そうでなければ、これが“イベント”というやつなのだろうと高をくくっていた。
…そう。
その時は。
しかしもう、認めざるを得ない。
ここは抜け出すことのできない迷宮なのだと。
そして、わたしがここでできることは殆ど無い。
繰り返して言うが、わたしはゲーム初体験者であり、何ができるのかも、何をやっていいのかもわからないし、そのお陰でゲームを始めた直後にパーティーひとつを危うく全滅させるところだった。
茅場晶彦はこのゲームをクリアすればここから出られると言っていたが、こんなわたしがゲーム攻略に役立てる訳がない。
だから、わたしはわたしに出来ることをやろうと思う。
わたしが出来ること…
その内のひとつがこの手記だ。
この恐ろしいゲームの中で、囚人となった当事者が何を考え、どのように行動したのか…
拙い文章ではあるが、その軌跡を少しでも残していこうと思う。
……例え、途中でわたしが倒れても、わたしという人物がこの世に存在したという証を残す。
そして、最後まで生き残れたら、この手記を出版社へ持ち込んでやるわ。
こんなゲームに巻き込まれたんだから、少しぐらいは金儲けに走っても許されるでしょ?
わたしは一応苦学生だし、お金はいくらあっても足りないんだから!
△○年×月◆日より記す
ニーダ・ブレンネン
- 最終更新:2011-07-25 01:04:49